久野ひさのはギヤマンの洋灯ランプに火を点ともし、すこしひえてきたの で桐の丸火鉢を火箸ひばしでさぐった。 簪かんざしをはずし、鏡台に向かって化粧なおしをすませると、 教えられた通り座敷着から緋ひの長襦袢ながじゅばんに着替えた。 隣の四畳半では、下新造したしんぞうのお粂くめさんが田村さんの着物 や袴はかまを脱がせ褞袍どてらに着替えさせている。その衣ずれの音 がシュッシュッと襖ふすま越しに聞こえた。 −後略−
洋 灯ランプ
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